海辺の杜に懐かれた家

海辺の杜に懐かれた家


概要

建築場所 島根県出雲市
竣工 2019年4月
設計/監理 株式会社 TEAM STUDIO ARCHITECTS
施工 ヒロシ株式会社

広報担当より

さりげなく顔を出す海辺の別荘

海辺から見ると、崖に群生した小さな竹林からさりげなく顔を出しているように見える別荘建築が「海辺の杜に懐かれた家」です。この「海辺の杜に懐かれた家」は、週末などに山陰の海辺の自然を楽しみながら時間を過ごすために建築された別荘です。
フランス南東部のプロバンスの建築を感じさせるような玄関から中に入っていくと、少し複雑なフロア構成となっていることが感じられるでしょう。
そのとおり、この別荘の建築された場所における地形や自然等の条件は、海辺の環境含め建築には少し難しい場所といえるものでした。

美しい自然を堪能できるように

厳しい自然や特殊な地形の地域にあえて建築物を立てる場合の理由として多くあるのは、別荘としてのように美しい自然を眺めながら暮らすためという場合があるでしょう。
この「海辺の杜に懐かれた家」についても、美しい海辺の自然を愛でるためというのが、施主が建築を決めた理由の1つでした。
この別荘では、その目的のとおり四季それぞれ違った表情を見せてくれる山陰の日本海の絶景をキッチンやお風呂、和室からそれぞれ眺められるようにデザインされています。
特にお風呂については(写真からはわかりにくいですが)、奥に入るとL字型に窓が配置されており、湯船につかったときに最高の開放感を味わえるようになっています。
この別荘の多くのフロアで、海が見える、海が感じられる構成となっているのです。
なお、開放的ではあるものの外からの視線は気にしなくても良いように、そして一定のプライバシーを確保できるように、目隠し等も配慮・デザインされています。

厳しい自然に寄り添っていけるように

災害の多発など、自然災害の脅威というのは近年増しているように感じられます。
この「海辺の杜に懐かれた家」のように、厳しい自然や複雑な地形形状に建つ建築の場合はなおさらのこと、それに注意した建築デザインを行わなければなりません。
文頭に「崖に群生した小さな竹林からさりげなく顔を出しているように…」という一節がありますが、そのさりげなく顔を出すのも、この別荘が建つ自然環境にも理由があるのです。
もとからあった小さな竹林は、この土地において風から守ってくれる防風林のような存在です。もし、それらに無用な手を加えてしまうと、風の影響を悪化させてしまうことにもなりかねません。
そこに存在する自然環境を詳しく調べ、時には利用することで、厳しい自然の影響を最小限に押さえることにチームスタジオアーキテクツでは注意を払っています。
また、自然条件同様に地形条件も少々厳しいものでした。
この別荘が建つのは崖が近くに広範囲にわたって存在するエリアで、崖条例の適用を受ける地形でした。
チームスタジオアーキテクツでは、その崖条例などの条件をクリアーするために、敷地外まで含めた広範囲の崖等の測量を行い、安全に建築できるエリアを丹念に調査することから設計が開始したのでした。

自然が造ってくれた形

その他、エントランスから玄関までの動線などが一直線でないのも、家相や風水の世界では一般的な魔除けの動線であり、一直線に悪い気が流れ込んでくるのを防ぐとされている動線です。
このように、この「海辺の杜に懐かれた家」は、チームスタジオアーキテクツがデザインした形というよりも、自然が造ってくれた形というべきデザインなのかもしれません。

この別荘では、建築されてから長い年月を自然と寄り添って、施主やそのご家族が幸せに自然を愛でることができるようにこだわってデザインの取り組みを行いました。
(上で触れた箇所以外でも)玄関から建物を見たとき、美しい建築の顔が真正面にくるように、また建物の側面から海に真正面に向かい合わせできるように、建物は四角ではなく(上から見ると)「Vの字型」の形状となっていたり、造作のキッチンテーブルや和室下に隠して収納できるソファなど、細かな家具までオリジナル造作で制作されていたりなど、建物形状から配置される家具にまで施主と施工者(職人)、建築家の想いや、こだわり、手間などが詰まっています。

「自然などの周辺環境から着目して、その建築がそこに存在する理由・価値を探る。そこから建築デザインが始まる。」とするチームスタジオアーキテクツの基本的な思想は、この「海辺の杜に懐かれた家」においても色濃く表現されていると言えます。

(広報担当 N)