小さく住まう
アーキテクト・スタジオ・ジャパン(ASJ)セミナー用解説記事
(2026/2/21セミナー)

使い方(この「記事」の読み方)
動画併用として
各章に「動画エッセンス」を整理しています。
【動画1】 【解説付きルームツアー】1800万円でできた!『ジャンクなカリフォルニアハウス』|建築家とクライアントが本気出したらできた
【動画2】 【神回・オーナーインタビュー】1800万円でできた!『ジャンクなカリフォルニアハウス』本気の裏側|建築家とクライアントが本気出したらできた
【動画3】 【狭小17坪でもホテル級!】異次元!建築家の『実験狭小住宅』|建築家が本気出したらできた(解説付きルームツアー)
【動画4】 【裏技公開!】贅沢を目指す!狭小住宅の作り方|欧州家電の実力|バス空間のご褒美性|ビンテージ家具の資産性
重要な注意
最終的な判断は、設計者・施工者と相談の上で行ってください。
- 4本のYouTube動画(建築家・オーナーの実例)をもとに、コンパクトに暮らすための考え方と工夫を整理したものです。
- 金額・仕様・性能は、敷地条件、地域、法規、工事時期、設備、家族構成で大きく変動します。特定の金額(例:1800万円)を一般化する意図はありません。
1. いま「小さく住まう」が現実解になりつつある
1.1 (1章の)はじめに
「家が欲しい。 でも予算が届かない。」
「広い家が理想だけど、建てた後の維持管理も不安。 」
——今、こう感じる人が増えています。
ただ、ここで一つ誤解があります。
“小さい家=我慢”ではありません。
今日のテーマは、“小さくすること”そのものではありません。
無駄を削って、残すべき価値を残し、上げるべき質を上げるという設計の話です。

1.2 この章の結論
- 「小さく住まう」は節約術ではなく、優先順位の編集術。
- 価格高騰局面では、「面積を買う」から「暮らしを設計する」へ視点を切り替えると失敗が減る。
1.3 動画の中で触れられている点
- (動画2)オーナーが賃貸から持ち家へ移った動機:「家賃がもったいない」「自分のものになった」
- (動画2)建築家側の現実:「1800万で作るのは無理かなと思って一度断った」
- (動画4)注意喚起:「狭小=安い、で作ると失敗しやすい」趣旨の発言
ここで大事なのは「恐怖を煽る」ことではありません。
誤解を壊して、判断軸を渡すことです。
1.4 ミニワーク(やってみよう)
Q:あなたが家(住まい)に求めるものは何ですか。
次のうち、特に強いものを3つ選びます。
優先順位を決めていきます。
- 固定費を下げたい
- 家事を減らしたい
- くつろぎたい
- 趣味(猫/DIY/車など)
- 人を招きたい
- 仕事の集中
- 眺め・光・風
- 安心(性能/耐久)
- 将来の変化対応
この3つが、後で「削る・残す・上げる」に直結します。

2. 定義:小さく住まう=「削る・残す・上げる」の優先順位設計
2.1 (2章の)はじめに
「小さく住まう」で失敗する人は、“削る”だけをします。
成功する人は、“残す”と“上げる”を先に決めます。

2.2 用語の定義
優先順位設計
- 定義:限られた予算と面積の中で、価値の順番を決めて設計すること
- わかりやすく言うと:全部は無理。大事なものから守る
- 例
- 「仕上げは簡素でも、断熱と動線は落とさない」
- 「設備は絞るが、くつろぎの場所(バスや縁側)は作る」
2.3 「削る・残す・上げる」
中心の型は「小さく住まう=優先順位設計(削る・残す・上げる)」です。

削る
- 面積のムダ
- 固定観念(部屋数など)
- 過剰な仕上げ・装飾
残す
- 光・風の抜け
- 家事動線の短さ
- プライバシーの守り方
上げる
- 触れる質感
- 断熱・気密
- 修理して使える耐久
2.4 動画の中で触れられている点(この型が“実例で”どう出ているか)
- (動画1)「いかに素材のコストを下げるか」→ 削る
- (動画2)「できること/できないことを明確に分けた」→ 残す/上げるを守るための整理
- (動画2)「中の断熱性能はコストをかけた」→ 上げる(落とさないところ)
- (動画3)「照明はどこまでいる?」→ 削る(常識の棚卸し)
- (動画3)「塗り壁・タイル・浴室のご褒美性」→ 上げる(体感価値)
2.5 ミニワーク(やってみよう)
1章で選んだ「3つ」を使って、下をメモで埋めます。
- 削る(捨てられるムダ):____
- 残す(暮らしの核):____
- 上げる(ここだけは質を上げたい):____
ここまでできると、残りは“具体例の答え合わせ”になります。
3. メリット:小さい家が“強い”5つの理由(コストだけじゃない)
3.1 (3章の)はじめに
小さい家のメリットは「安い」だけだと思われがちです。
でも本当は、時間・体力・気分に効くのが大きいです。
ここを理解すると、「小さくする不安」より「小さくする設計」に頭が切り替わります。

3.2 理由① 固定費・運用費をコントロールしやすい
面積が小さいほど、冷暖房・清掃・修繕の“対象”が減ります。
ただし、性能と設計次第で結果は変わります。
気密・断熱が弱い小さい家は、逆に不快で光熱費が上がることもあります。
動画の中で触れられている点
- (動画4)小さい家はエアコン台数・照明点数が少ない/固定資産税が小さい趣旨
- (補足)「面積×運用」の見方を渡す材料として使う
3.3 理由② 家事動線が短くなり、時間が戻る
家事動線が短いほど、移動が減り、時間と体力が戻ります。
用語:家事動線
- 定義:洗う→干す→しまう、料理→配膳→片付け、などの移動経路
- わかりやすく言うと:家事の「歩く距離」
- 例:キッチン周りに「洗う・乾燥・収納」を集約する
動画の中で触れられている点
- (動画3)「究極の一直線の生活動線」
- (動画3)生活メンテを短距離で完了させる発想(食洗機・洗濯機などの集約)
3.4 理由③ 「体感面積」が増える(狭くても広く感じる)
数字の面積より「見え方・抜け・天井・光」で感じる広さが、暮らしの満足度を左右します。
用語:体感面積
- 定義:実面積ではなく「見え方・抜け・天井・光」で感じる広さ
- わかりやすく言うと:数字より「広く感じる工夫」
- 例:ロフト、天井の抜け、外部テラス、視線の抜け
動画の中で触れられている点
- (動画1)外部テラス+室内が連続して「広く感じる」
- (動画3)大きな扉・アプローチ・2階リビングで「光と抜け」を確保

3.5 理由④ 「上げる投資」がしやすい(小さいから総額が伸びにくい)
ありがちな誤解は「良い素材=高い=無理」です。
小さい家は「高い部分」を点で入れやすく、総額が破綻しにくいです。
例は、床、手すり、浴室、塗り壁など「触れる場所」です。
動画の中で触れられている点
- (動画2)断熱や床材はコストをかけた(“削らない領域”)
- (動画4)小さいからこそ質を上げても全体が破綻しにくい趣旨
3.6 理由⑤ 趣味・回復の場が「生活の一部」になる
小さい家は趣味を「別室」で持ちにくいです。
だからこそ、生活導線上に趣味や回復を埋め込むと強いです。
動画の中で触れられている点
- (動画1)外部テラスでDIYや作業、縁側で迎える
- (動画2)「休みの日にコーヒー→ゆったり動画」=回復の場として機能
- (動画1)梁をキャットウォークにして“猫の幸福”を設計に組み込む
4. デメリット:小さい家で“詰む”3大ポイントと設計の処方箋
4.1 (4章の)はじめに
小さい家は「詰みポイント」があります。
でも、詰む理由はだいたい決まっています。
だから対策も決まります。

4.2 詰み① 収納(物量)問題
よくある失敗
- 収納不足で常に散らかる
- 見せる収納にして、結局ストレスが増える
処方箋(設計×運用)
- 設計
- 収納を「家具」ではなく「建築」に埋め込む
- 箱階段(収納兼階段)
- ロフト
- 壁厚を使う/床下利用
- 運用
- 物量を棚卸しして「持つ理由」を整理する
- ミニマムにする覚悟を先に決める
動画の中で触れられている点
- (動画1)箱階段で収納+階段を両立
- (動画4)コンパクトに住むには「物を持たない覚悟」の話
4.3 詰み② 視線・プライバシー(カーテン問題)
よくある失敗
- 近隣が近くてカーテン閉めっぱなし → 狭く感じる
- 開けると落ち着かない
処方箋(窓の役割を分ける)
- 光の窓:高窓・天窓・すりガラスで「明るい」を取る
- 抜けの窓:視線が抜ける方向にだけ大きく取る
- 風の窓:小さくても対角に配置して風を抜く
- 目線を切る「壁」をもう一枚つくる(外部空間の設計)

動画の中で触れられている点
- (動画3)周辺環境を想定して窓を小さくし、2階で光を取る
- (動画3)カーテン無しで生活できるように窓配置を工夫する趣旨
4.4 詰み③ 音(外の音/室内の響き)
よくある不安
- ガラスが多いと音が漏れるのでは?
- 小さい家は反響してうるさいのでは?
処方箋(材料×気密×ゾーニング)
- 壁の中の断熱材(密度)が遮音に寄与する
- 窓は気密性能が重要(単板→複層・高気密)
- 寝室ゾーンは静けさを守る配置にする
動画の中で触れられている点
- (動画2)屋根の音が心配 → 居住部は気にならなかった(体験談)
- (動画4)断熱材(例:ロックウール)密度・窓性能の話
4.5 追加の盲点:将来の変化(家族構成・用途)
小さい家ほど「用途固定」がリスクになります。
最初から「変えられる余白」を設計に入れるのが安全です。
動画の中で触れられている点
- (動画2)テラス部分は増築・転用しやすい趣旨(子ども部屋化も可能)
4.6 ミニワーク(やってみよう)
あなたの「詰みやすさ」自己診断です。
当てはまる項目にチェックを付けます(○が多いほど先回り設計が必要)。
- 収納:物を捨てるのが苦手 □
- 視線:落ち着かないと疲れる □
- 音:音に敏感 □
- 将来:家族構成が変わる可能性が高い □
- 趣味:道具が多い □
○が多い項目は、設計に「先に織り込む」のが正解です。
あとでやると高くなります。
5. 失敗しない進め方:チーム×決断×コミュニケーション
5.1 (5章の)はじめに
小さい家は、決断の回数が増えます。
迷って止まると、現場が止まり、コストが増えます。
逆に、良いチームができると、小さい家は「最高に楽しいプロジェクト」になります。
5.2 用語:チームづくり(建築プロジェクト)
- 定義:施主・設計・施工が同じゴールを共有し、判断を積み上げる状態
- わかりやすく言うと:みんなが同じ方向を向いて、決めながら進める
- 例:週1打合せで「決めること」を先に出す
動画の中で触れられている点(本筋になる材料)
- (動画2)オーナーの結論:「建築家さんとのコミュニケーション。 あとは信じること。」
- (動画2)建築家側の本音:「決断してくれる人」「信頼してくれる人」じゃないと成立しにくい
- (動画2)打合せの雰囲気:「毎週楽しみだった」
5.3 すぐ使える「打合せテンプレ」
毎回の打合せで必ず決める3点
- 今日決めること(Yes/No):最大3つ
- 保留の条件:保留するなら「いつまで」「誰が何を調べる」
- 次回の宿題:写真/寸法/生活シーン(例:朝の動き)
“迷い”を減らす4つの判断軸
- コスト(初期費用)
- 性能(断熱/気密/耐久)
- 体感(広さ/光/音/落ち着き)
- 将来(可変性/売却/維持)
小さい家は「体感」を軽視すると失敗します。
数字だけで決めないのがポイントです。
5.4 よくある「危険な言い方」と言い換え
- NG:「任せます(丸投げ)」/OK:「方向性はこう。 判断が必要になったらここまで任せたい」
- NG:「それ、安くなります?」/OK:「削るならどこ? 残すならどこ? 上げるならどこ?」
- NG:「あとで考える」/OK:「いつまでに決める? 止まったら何が増える?」
6. 実例解剖:2案件で「設計の意思」を読み解く(Case A / Case B)
ここは「面白い話」ではなく、自分の家に転用できるルールを抜き出す章です。


6A. Case A:『ジャンクなカリフォルニアハウス』の解剖
6A.1 一言でまとめると
- 「安い素材」を集めて、デザインで成立させた家
- 外部テラスと中間領域で、体感面積を増やしている
6A.2 設計の「意思」3つ(持ち帰るポイント)
- 意思①:素材コストを下げても「仕上がり」は下げない
- 配置、色、連続性で“絵”にする
- 既存物(古材など)の説得力を使う
- 安っぽく見えやすい素材ほど、納まりと安全を丁寧にする
- 意思②:半屋外(テラス)を「暮らしの主役」にする
- 3面が開く扉で、外部テラスを“ほぼ室内”のように使う
- BBQ、DIY、洗車などが家の価値になる
- 意思③:ジャンク→上質への「切り替え点」を作る
- 玄関付近で雰囲気を切り替える
- 居住部は落ち着いた質感に寄せる
6A.3 動画から拾える象徴シーン
- (動画1)「いかに素材のコストを下げるか」
- (動画1)「外部テラスとして作ってます」
- (動画1)「後々いろんなDIYができる」
6A.4 「転用」チェックリスト
- 半屋外を作るなら、雨・風・日射の条件を整理したか?
- そこで何をするか(DIY/趣味/迎える/子ども)を決めたか?
- ジャンク素材を使うなら、耐久と安全(雨仕舞・エッジ処理)をどう担保するか?

6B. Case B:『実験狭小住宅(17坪)』の解剖
6B.1 一言でまとめると
- 「狭い=不便」を覆す、“ホテルライク”な実験住宅
- 生活機能を集約し、光・窓・素材・設備で「回復」を作っている
6B.2 設計の「意思」4つ
- 意思①:動線を極限まで短縮して、日常の負担を消す
- 食洗機・洗濯・収納を集約し、家事を短距離で完結させる
- 作業の形(例:オーブン中心)を変えて、間取りを変える
- 意思②:光は「南に大窓」だけが正解じゃない
- 周辺に家が建つ前提で、窓の位置と大きさを設計する
- 2階にリビング、上から光、視線は切る
- 意思③:ご褒美の場所(浴室)で、満足度を上げる
- 浴室を「回復の道具」として扱う
- 素材・照明・設備で「非日常」を作る
- 意思④:作り込みは「全部」ではなく「ポイント」で効かせる
- 螺旋階段、手すり、建具など一部を作り込む
- 効く場所に絞ることで、コストと満足を両立する

6B.3 家電・家具の扱い
- 結論は「海外が正義」ではない
- 結論は「欲しい価値から選ぶ」(修理できる/長く使える/静音/容量など)
- 例として、ガゲナウ/ミーレ/ボッシュ/デロンギなどが「動画内では」登場する、に留める
- IKEAを出す時も「使い分け」で語る
- 「何を買うか」より「何を大事にするか」が先
6B.4 「転用」チェックリスト
- 家事の手順(洗う→乾かす→しまう)を「図にした」か?
- 光(昼)と照明(夜)の役割を分けたか?
- 小さい家でも「回復の場」をどこに置くか決めたか?
7. ライフスタイル別の適用:あなたの暮らしに落とす
7.1 (7章の)はじめに
同じ「狭小」でも、正解は人によって違います。
ここからは「あなたのタイプ」に落として、使える形にします。
7.2 4タイプ分類(自分ごと化しやすい)
- タイプ1:初めて取得(予算不安)
- タイプ2:住み替え・縮小(維持管理不安)
- タイプ3:趣味・回復重視(賃貸制約)
- タイプ4:在宅ワーク(集中と生活の分離)
7.3 タイプ別「残す/上げる」推奨
タイプ1:初めて取得
- 残す:断熱・気密、家事動線、将来可変
- 上げる:床や手に触れる質感(満足度の核)
- 注意:金額だけで決めると失敗する
タイプ2:住み替え・縮小
- 残す:バリアフリー動線、掃除のしやすさ
- 上げる:浴室など回復の場
- 注意:収納は「物の整理」が先
タイプ3:趣味・回復重視
- 残す:中間領域(テラス/縁側)、土間
- 上げる:趣味の使い勝手(水栓、作業台、照明)
- 注意:尖りすぎると将来転用しづらい
タイプ4:在宅ワーク
- 残す:集中スペース、音と視線の設計
- 上げる:椅子・照明(疲労に直結)
- 注意:生活と仕事が混ざると疲れる
8. まとめ:今日からできる「3つの一歩」
8.1 (8章の)はじめに
設計は、いきなり図面から入ると迷います。
まず「暮らし」から逆算しましょう。
8.2 3つの一歩(今日からできる)
- 物量棚卸し:捨てるではなく「持つ理由」を整理する
- 家事動線の可視化:洗う・干す・しまうを紙に書く
- 削る/残す/上げるを決める:優先順位を先に固定する
8.3 まとめ
小さく住まう本質は、面積ではなく「編集」です。
ワークで優先順位が見えたなら、それはもう設計が始まっています。
付録
配布・復習・打合せで使えるテンプレをまとめます。
付録A:ワークシート(配布用テンプレ)
A1. 「削る・残す・上げる」シート
- 削る(ムダ):____
- 残す(暮らしの核):____
- 上げる(質を上げたい):____
A2. 家事動線リスト化(発想の転用)
- 洗濯:洗う → 乾かす → しまう(距離/回数)
- 食事:調理 → 配膳 → 片付け(距離/回数)
- 掃除:掃除機 → 拭き → ゴミ出し(距離/回数)
目的は「理想の動線」を描くことではありません。
現状の「ムダ移動」を見つけることです。
A3. プライバシー×採光の窓計画シート
- 光が欲しい場所:____
- 視線が気になる方向:____
- 風を抜きたい方向(対角):____
- 目線を切る壁が必要か:Yes / No
- すりガラス(型板)で良い窓は:____
付録B:よくある質問(初心者向けの答え方)
Q1. 小さい家って、結局「我慢」になりませんか?
我慢になるのは、「削る」だけをした時です。
成功するのは、「残す(光・動線・落ち着き)」と「上げる(触れる質感・性能)」を先に決めた時です。
Q2. 収納が少ないのが怖いです
怖いのは正しい反応です。
対策は「収納を増やす」ではなく、順番を守ることです。
- 物量の棚卸し
- 収納を建築に埋め込む(箱階段・ロフト等)
- 用途固定を減らす
Q3. 近隣が近いと暗くなりませんか?
窓は「大きさ」より「位置と役割」です。
光の窓、抜けの窓、風の窓を分けると、カーテン閉めっぱなしを避けやすいです。
